中国の大学入試「高考」でAI監視を導入受験の公平性を守る最新テクノロジーの現場

中国では、全国統一の大学入試「高考（ガオカオ）」が今年もスタートしました。この試験は、文字通り「人生を左右する」とまで言われる重要な試験であり、毎年数千万人が挑戦する一大イベントです。

近年、不正行為の増加が問題となる中、試験会場ではAI（人工知能）を活用した監視システムの導入が進んでいます。この記事では、高考の重要性とAI導入の背景、そして公平性確保に向けた最新の取り組みについてご紹介します。

高考とは？中国最大級の教育イベント

高考は、中国全土で同一日程で実施される大学入試の全国統一試験です。日本の大学入学共通テストに相当しますが、その影響力はさらに大きく、多くの学生にとって「人生の進路が決まる日」と言っても過言ではありません。

合格すれば一流大学に進学できる一方で、不合格となれば進路に大きな制約が出るため、受験生だけでなく家族や地域社会全体が大きな関心を寄せています。

高考の重要性が高まる中、不正行為も巧妙化・多様化しています。イヤホン型のカンニング機器やスマートウォッチ、他人による替え玉受験など、過去にはさまざまな手口が報告されています。

こうした不正は、真剣に取り組む受験生にとって大きな脅威であり、試験制度そのものの信頼性を損なう要因となっています。

今年の高考では、AIを活用した監視カメラや分析システムが全国の会場に導入されました。AIは顔認証や不審な動作の自動検知に対応しており、試験官の目が届きにくい箇所でも監視が可能になります。

これにより、以前よりもはるかに高精度かつ効率的な不正検出が可能となり、カンニング行為の抑止力として大きな効果を発揮しています。

AIは優れた分析能力を持つ一方で、完全に誤検出がないわけではありません。したがって、中国当局はAIによる監視に加え、経験豊富な試験監督員による「人の目」のチェックも併用しています。

テクノロジーと人間の協力体制によって、公平性の高い試験環境の実現を目指しています。

高考におけるAI監視の導入は、教育の公平性とテクノロジーの融合を象徴する事例です。こうした取り組みは、将来的には他国の入試制度や資格試験などにも広がる可能性があります。

ただし、過度な監視によるプライバシーの問題や、AI判断の正当性をめぐる議論もあり、今後は社会的なバランスが求められるでしょう。

AIの進化により、教育の現場でも新たな問題解決の道が開かれつつあります。高考のような大規模試験において公平性を保つことは、受験生一人ひとりの未来を守るためにも不可欠です。

中国での取り組みは、日本を含む他国にとっても大きな学びとなるでしょう。今後もAI技術と教育の交差点に注目し、公平で信頼できる社会を共に築いていく必要があります。